「霜の朝にビオラがぐったりしていたので、枯らしたと思って抜いてしまいました」。
冬になると、こんな話を耳にします。
山梨で小さな花農家をしている私から先にお伝えすると、凍った朝の株は、まだ枯れていないことがほとんどです。
ぐったりした姿に驚いても、あわてて抜く必要はありません。
この記事では、抜かずに待つ理由と本当に傷んだ株の見分け方、春の満開につなげる冬の世話をお話しします。
凍った朝のビオラは、まだ枯れていません
土が解ければ、ちゃんと起き上がります
山梨の盆地は、冬の朝の冷え込みが厳しい土地です。
畑のビオラも、霜が降りた朝は葉のふちが白くなり、株ごと地面にへたり込んだように見えます。
はじめて見た方が「全滅した」と驚くのも無理はありません。
ところが日が高くなって土が解けてくると、葉はまた持ち上がってきます。
鹿児島県長島町の広報誌に載っているパンジー・ビオラの栽培管理にも、土が凍結しても枯れず、解けるとピンと回復すると書かれています。
同じ資料では、耐寒性の目安はマイナス10℃です。
パンジーとビオラは同じスミレ科で育て方も同じなので、この記事の話はどちらにも当てはまります。
凍っている間は、手を出さないのがいちばんです
心配になると何かしてあげたくなるものですが、朝のうちは次の3つを控えてください。
- 凍った葉や花にふれて、霜を払う
- 凍った土の上から水をかける
- かわいそうだからと、暖かい部屋へ取り込む
凍った葉はもろいので、指でつまむとそこから傷んでしまいます。
水も、せっかく解けかけた土をまた凍らせるだけなんですよ。
部屋へ取り込むのも、私はおすすめしません。
ビオラは日なたを好む花で、日照が足りないと花付きが悪くなり、茎が細く間延びしてしまいます。
寒さから守ったつもりが、株を弱らせてしまうこともあるんです。
抜く前に見てほしい、株のサイン
判断するのは、日が当たったあとです
朝の姿だけで株の良し悪しを決めないでください。
私が畑で株の様子を見るのは、日が当たって土が解けたあとの午後です。
一度で決めず、2〜3日続けて同じ株を見るようにすると、まず間違いません。
毎朝ぐったりしていても、午後に葉が起きていれば心配はいりません。
それはその株が、寒さとうまく付き合っているしるしだと私は思っています。
株の状態を見分ける早見表
冬の株によくある姿を、表にまとめました。
抜かなければならないのは、いちばん下の段だけです。
| 株の様子 | 考えられること | やること |
|---|---|---|
| 朝だけぐったりし、午後には葉が起きる | 冷え込みによる一時的な姿 | そのまま見守る |
| 葉が紫がかってきた | 冷たい風に当たっている | 風の当たらない場所へ移す |
| 咲いていた花だけ茶色く傷んだ | 霜で花が傷んだ | 花茎ごと摘む |
| 苗が持ち上がり、根が見えている | 霜柱で浮いた | 土を寄せて軽く押さえる |
| 花や茎に灰色のかびが出ている | 灰色かび病の疑い | 傷んだ部分を取り除く |
| 何日も午後までしおれ、株元がぐらつく | 根が傷んでいる | 株ごと抜いて処分する |
抜いてよいのは、こんな株です
手放す判断をするのは、午後になっても何日もしおれたままで、土は湿っているのに元気が戻らない株です。
株元を軽くつまんでぐらつくようなら、根が傷んでいる可能性が高いでしょう。
冬は土が乾きにくいので、水のやりすぎが原因になっていることも少なくありません。
灰色のかびは、花がらや枯れ葉から広がることが多いものです。
株全体がだめになったわけではないので、傷んだところを取り除けば残せる場合もあります。
寄せ植えなら、傷んだ一株だけを抜いて、まわりの株はそのまま育ててください。
霜の害を小さくする、冬の朝の世話
水やりは、土が解けてから午前中に
冬の水やりは回数を減らして、タイミングを選びます。
長島町の資料では、水の凍結を避けるため午前中に与えるとされています。
寒い地域なら、土が解けて日が当たりはじめた、午前中でも遅めの時間がいいですね。
名古屋市のなごや花の環ネットの冬の花壇管理には、指を土に差し込んで第一関節あたりまで乾いていたら水やりの合図、という分かりやすい目安があります。
冬は水やりを忘れがちだと同じ資料にもあるとおり、凍る心配ばかりして乾かしすぎるのも困りものです。
鉢植えは特に乾きやすいので、晴れが続いた週はときどき指で確かめてみてください。
浮いた苗は、土を寄せて戻します
凍った朝に見落としやすいのが、霜柱の害です。
土の中の水が凍ったり解けたりをくり返すと、株が少しずつ押し上げられ、根が切れたり外に出たりします。
多年草についての解説ですが、ミズーリ植物園のページでも、植えて間もなく根が張りきっていない株は特に起こりやすいとされています。
花壇の苗が傾いていたら、土が解けた時間に株元へ土を寄せ、指で軽く押さえて戻してあげましょう。
凍っているときに押すと根を傷めるので、作業は解けてからです。
株を埋めない程度に腐葉土などを敷いておくと、土の急な冷え込みも和らぎます。
冷たい風の通り道から外します
寒さそのものより、私が気にしているのは風です。
長島町の資料にも、ベランダの強い寒風は葉を紫色に変色させるとあります。
鉢植えなら、北風が抜けるベランダの手すり際から、壁寄りの日なたへ少しずらすだけで違ってきます。
ただし、風を避けようとして日陰へ入れてしまうと花付きが落ちるので、日当たりは優先してください。
春の満開につなげる、冬の手入れ
花がらは、花茎のもとから摘みます
冬の間にできるいちばんの世話は、花がら摘みです。
パンジーやビオラは冬の間も花を咲かせて種をつけ、種を育てるために栄養が取られると株が弱ります。
なごや花の環ネットの資料では、終わった花だけを摘むと花茎が残って黄色く枯れるため、花茎のもとから摘むよう勧めています。
花びらのすぐ下をちぎるのではなく、細い茎をたどって根元からつまんでください。
残った花がらはカビの原因にもなるので、枯れた葉も一緒に取っておくと安心です。
花が少なくても、失敗ではありません
1月ごろになると、「秋より花が減ってしまった」と心配される方もいます。
千葉県が2014年度に行った耐寒性パンジー・ビオラの品種試験によると、もともと苗の見ごろは厳寒期の前と早春以降の2回に分かれていたそうです。
最近は厳寒期も咲き続ける品種が増えましたが、差は大きいものです。
同じ試験の上位品種は1〜2月も1平方メートルあたり400輪以上を保った一方で、100輪前後にとどまる品種もありました。
冬に花が少なくても、育て方が悪いとは限らないんですよ。
株が元気なら、春になれば花はちゃんと増えてきます。
肥料は、少しだけ足します
秋に植えた株は、1〜2か月たつと土の養分が薄れてきます。
名古屋の資料では、株元から少し離して、ゆっくり効く固形肥料を置く方法が紹介されています。
冬の株は大きく動かないので、袋に書かれた量を超えないようにしましょう。
春の切り上げ時期も覚えておくと便利です。
長島町の資料では、3月の液体肥料は10日に1回ほどにとどめ、4月以降は与えないとしています。
お住まいの地域の春の進み具合に合わせて、調整してみてください。
11月にこれから植える方へ
花の数より、葉と株のしまりで選びます
11月はお店に苗がたくさん並ぶ時期ですね。
つい花がたくさん咲いた苗に手が伸びますが、私が見るのは葉のほうです。
葉の色が濃く、茎が間延びしていない、背の低いがっしりした苗を選んでください。
ポットの底から白い根がのぞいていれば、なお安心です。
寒い地域にお住まいなら、できるだけ11月のうちに植えて、本格的な冷え込みの前に根を張らせておきましょう。
霜柱で浮きやすいのは根が浅い株なので、早めに植えるだけで冬の手間が減ります。
12月に入ってから植えるなら、まずは鉢植えにして軒下の日なたで育てるのも手です。
根をほぐして、日なたに植えます
ポットから抜いた苗は、びっしり張った白い根をはがすようにほぐしてから植えつけます。
長島町の資料によると、こうすることで新しい根が伸びやすくなるそうです。
最初はかわいそうに感じますが、丸まった根のまま植えるより、その後の育ちがよくなります。
水はけの悪い土は、凍ったり解けたりをくり返しやすく、霜柱も立ちやすくなります。
花壇に植えるなら、腐葉土などをすき込んで土をほぐしておきましょう。
土づくりの基本は、以前書いたガーデニング初心者向け:基本の土作りと植え方も参考にしてみてください。
まとめ
霜の朝にぐったりしているビオラやパンジーは、枯れたのではなく、土が解けるのを待っているだけのことがほとんどです。
朝は手を出さず、日が当たったあとの午後に、2〜3日続けて様子を見てください。
抜くのは、何日も戻らず株元がぐらつく株だけで十分です。
冬の世話は、午前中の水やり、花茎のもとからの花がら摘み、冷たい風を避ける置き場所の3つを押さえれば大丈夫です。
霜柱で浮いた苗は、土が解けてから戻してあげましょう。
うちの畑でも、真っ白に凍った朝を何度も越えた株ほど、春にはよく咲いてくれます。
明日の朝、凍ったビオラを見つけたら、まずはコーヒーでも飲んで、お昼を待ってみてくださいね。
